出会いが転がっているのは、「そこ」じゃない。

ーー最新のキャリア理論を、そっくりそのまま恋愛にあてはめることで、「恋のキャリアアップ」を目指す、不定期連載コラムを開始します。どうぞお楽しみに!!ーー

☆連載コラム:キャリア理論が恋に効く 第一回☆

●「プランドハップンスタンス理論で、素晴らしい出会いをつかむ」

★仕事編:ホームレスに話しかけると仕事がうまくいく!?

 今回とりあげるのは、「Planned Happenstance」理論です。日本語に訳すと「計画された偶発性」。これでもまだちょっと分かりにくいですね。これは、1999年にクランボルツ教授(1928~ 教育学・心理学教授 米スタンフォード大学)が発表した有名なキャリア理論です。

 それまで、個人のキャリア(仕事人生)は計画的(こういうプロセスを踏んで、こういうアプローチを踏めば、一定のゴールに到達できる)なもの、あるいは運命(生まれ育った環境や遺伝子、突発的な出来事によってどうしようもなく変化する)ととらえられがちでした。

 ところが、クランボルツ教授は、先行きが不透明で予測のつかない現代の社会では、事前にいろいろとプランを立てることには限界があり、むしろ身に降りかかったびっくりする出来事をどのようにとらえ活用するかがポイントと唱えました。

 さらには、「偶発的な出来事を意図的に生み出すように、積極的に行動すること」が、キャリア創造には重要だと述べたのです。

 ちょっと難しいですね。要は、こと仕事や人生をプランするに当たり、なかなか計画通りには進まない、むしろ進まないことが重要で、偶然のアクシデントが起こるように行動し、それを最大限利用する。そうすると、人生は開けるということです。

 クランボルツ氏は、数十人のビジネスマンへのインタビューを通じて、そう結論づけ、彼の考えとして理論化したわけです。

 また、「Happenstance」を呼び込むためには、好奇心旺盛で、柔軟な考えを持続させ、楽観的に考え、リスクを進んでとることが必要だとも述べています。

★名刺を100枚配るよりも

 皆さんも思い当たる経験がないでしょうか?

 「このプロジェクトに参加すると評価が上がって部署内で道が開ける」と期待して参加した仕事では、さほどいい結果も出会いもなく終わってしまう。

 逆に、ふと気が向いていつもと違うところでランチを食べてみたら、隣の部署の人と出会い、楽しそうな仕事に誘われる。そんな経験はありませんか? 

 この理論によれば、いい仕事や職に巡り会おうと思ったら、人脈を広げようと異業種交流会に出向き名刺を100枚配ることよりも、たとえば、「ホームレスに話しかけてみる」(実際にクランボルツ氏が薦めていることだそうです)といったようなことが重要になってきます。

 偶然を期待してなにもしないのではなく、かといって、打算に基づいてキャリアをコントロールしようとするのでもない、このなんともいえない中間的な考え方が、私はとても気に入っています。

★恋愛編:出会いたいから出会えない!?

 さて、この理論を恋愛にあてはめると、どんなことが見えてくるでしょうか?

 いい人と知り合いたい、素敵な人と出会いたい。「出会い」は、恋愛の中でもたしかに偶然によるところが大きいです。もちろん、素敵な人と出会ったからといって、そこからうまく恋が成就するかどうかは別の話ですが、とにかく、「出会いがない」というのは、巷でよく聞く声です。

 偶然を完全に運に任せるならば、街中で白馬に乗った王子様と運命的な出会いをするのを待つことになりますが、まあ、なかなかそういうわけにはいかないので、たいていの人は出会いを求めて、合コンやパーティーなど男女が出会うための場に赴くことになります。

 が、最初のうちは、ただ物珍しくてわくわくして行っていた合コンも、回数を重ねるうちに、「全然いい人が来ない」ということになり、そのうち、「行っても無駄」「当たり外れがある」などと敬遠するようになってしまいがちです。私の周りでも、「量より質」「効率を求めたい」と訴える女性が増えています。

 この「効率よく出会いたい」という発想が、「最短ルートで出世したい」という思想に近く、恋愛キャリアの開発の視点では、障害となっているように思うのです。

 偶然を黙って待っててもだめ。かといって、出会いを求めて合コンに行くのも違う。じゃあ、いったいどうすればいいのでしょう?? そこで、この偶然と計画の間にある「プランド・ハップンスタンス理論」の出番です。

 人生は計画しきれない。いろんなことが起こる。それを積極的にとらえる。さらには意識せずに(ここが難しいところですが)積極的になにかを起こそうとする。アクティブに、好奇心を持って、柔軟に考える。これが幸せなキャリアを積むためのコツ、プランド・ハップンスタンス理論でした。

 要は、足繁く合コンやパーティーに通うよりも、目の前の仕事を楽しみながら、誘われた新規プロフェクトには意欲的に参加することが、もしかしたらパートナーを見つける近道かもしれない、ということです。

 合コンに行くのが悪いというわけではありません。合コンを「いい人と出会わなければ意味がない」ととらえず、「なにか面白そうだから」と出かけ、単純に友達や新しい人と話すのが楽しい、という気持ちになったときに初めて、いい出会いが巡ってくるということかもしれません。

★毎日が楽しければそれでいい。で結果として、いいことがあったりなかったり

 もちろん、合コンの雰囲気が苦手なら、無理に行く必要はありません。好きなことに向けてエネルギーを燃やして日々の生活が充実してればそれで十分じゃないですか。それ以上の幸せなんてそうそうあるものではありません。

 もしそれでエネルギーが充電できて、たまには新しい人と話したいな、と思ったころには、ちょうどよく友人が遊びに誘ってくれるかもしれない。そのときには、少しめんどくさくても、足を運ぶ。それぐらいいいと思います。

 もちろんいろいろな場に顔を出すのは無駄足も多いでしょうけれど、それを無駄ととらえるかどうかは人それぞれ。なにかと動き回って「ああ、今日も楽しかった」と眠りにつく人と、普段はじっと身を潜めていてなにもせず、たまに「効率よく出会おう」とする人では、前者にいい偶発は訪れそうです。

 言ってしまえば「アクティブに動いているといいことがある」「意気込んで行ったときほど外しが多い」という、皆さんの中にもなんとなく経験値として溜まっていそうなこの感覚を、きちんと理論化したクランボルツさん、偉大じゃないですか?

 もちろん、この理論には、限界も、またまったく逆の結果となることもあると思います。幾多の理論と同じく、万能ではありません。

 が、それでも、「毎日そこそこ楽しいんだけど、こんなことでいいのかな?」「もっとずるがしこくなって計画的に恋を見つけないとだめかな」と焦ってしまうときに、ふと思い出すと少し安心することのできる、深ーい考え方だと思います。

 いかがですか?
!